生産者を訪ねて

夏を迎えれば広く愛好される「桃」と「葡萄」。
温暖な気候に恵まれた“晴れの国 岡山”のご当地特産品を使った企画を実施するにあたり、
市内の生産者それぞれに訪問させて頂く機会を得ることができました。
わずかな時間ながらも、お話にはそれぞれに共通して長い生産の歴史と注がれた努力や苦労が伺え、
事業を実施する上で貴重な経験になりました。
シーズンはしりにも関わらずご協力いただいた皆様に、感謝申し上げます。

【桃の里 浅原】の桃里庵 訪問

桃の里 浅原 桃里庵 訪問

倉敷北部にある「桃の里 浅原」は、古くから生産が盛んで、同じ倉敷市玉島地区に並び広く知られた地である。今回ご縁があり60年も営まれている生産者「桃里庵」を訪問することができた。ご対応頂いたのは、代表者:土居栄太郎さん。これからを担う若手経営者より、以下のようなお話を頂けた。

そもそも昔、桃は実より花を楽しむためにあった。それが江戸になって食の対象となったが、実も小さく硬くて酸味・渋みが強いものだったようだ。やがて明治期、中国より「水蜜桃」が輸入されて以来、桃が今いう“甘い桃”として知られるようになったわけである。「水蜜桃」は“現在の桃”に至る分岐点である。

その後、改良種の一つに「白桃」が生まれた。100年を通して岡山の栽培家たちが開発した「白桃」は、時と共に需要が増え国内はもとより海外へ出荷もされるようになって、桃の代表的存在になった。さらに開発も進み品種も増え、現在では はなよめ・白鳳・清水白桃・本白桃・川中島白桃 等々、10種を超える広がりの中で揺るぎない岡山のブランドを確立している。

“白桃は、なぜ白く美しいのか?”

「世界に誇るおいしい桃」を追求する志と信念の上に、数えきれないほどの手間ひまと愛情の中で育てられてきた故である。花芽がほころぶ 頃は余分な蕾を摘み、何度も摘果作業を続けながら梅の実ほどになった頃、一つ一つ袋に収めていく。袋がけは、直射日光や害虫・雨風から実を守るためであり、また数々の減農薬対策と共に、散布の際も直接果実にかからないようにするためでもあって、とても重要な役割となっている。やがて収穫期が近づきようやく日を浴びさせて、ほのかに紅をさす“美しい白”が完成するわけである。

〜桃のお尻にあたるところが、ほんのりピンク色でしょう。袋が開いているところなんです。そこに地面からの光の反射を受けて色づく。実はそこが一番甘みを含んでいるんですよ。だから切り方もランダムに切るより、櫛切りにした方が均等に食べ分けられるんです。

なるほど、話はおいしさを膨らませてくれる。

「桃里庵」ではその白桃を中心になんと20種類に及ぶ桃が生産されている。季節を迎え、日々慌ただしさが増すようになった。桃はそれぞれに収穫期が異なりいずれも期間が短い。最も早い6月の「はなよめ」に始まり「日川白鳳」「かのいわ白桃」「浅原小町」などなど、月ごとに何種も何種も品種が変わり、9月過ぎまで収穫と出荷作業に追われる毎日が続くという。

桃農家に、どうやらお盆休みはなさそうである。

(取材協力)桃里庵代表 土居 栄太郎  (参考書籍)「岡山のモモ、日本のモモ」著者:岡本 五郎

【葡萄の里:船穂】の岡山西農業協同組合

葡萄の里 船穂 岡山西農業協同組合

国内でも有数の葡萄の生産地、岡山県。とりわけマスカットは最大の生産量を誇り、台湾・香港を始めとする海外出荷も順調で、国内外を問わない評価を得ている。まさに岡山を代表する特産品だ。

瀬戸内地域ならではの、温暖な気候に恵まれた栽培適地であったことは言うまでもない。明治の頃より一世紀を超えて着手してきた長い歴史もある。中でも「温室栽培」の技術確立も手伝って、現在のような一大産地となったわけである。

5月末の朝、倉敷市船穂の「岡山西農業協同組合」を訪れた。船穂は、「マスカット」を筆頭に「ピオーネ」「瀬戸ジャイアンツ」など、県下でも最大の産地である。敷地内の出荷場は既に多数の生産者が集い、「温室栽培」で育てた葡萄の出荷にいそしんでいた。“温室もの”は4月から出荷が始まっているという。

一息ついた頃、お話を聞かせて頂く機会を設けて頂いた。ご対応は、組合内「船穂町ぶどう部会」の浅野部長をはじめとする方々。

〜「ピオーネ」も出荷が盛んですが、やっぱり「マスカット」ですね。中でも「マスカット・オブ・アレキサンドリア」が国内シェア90%以上、国内最大です。「シャインマスカット」も人気があって増え続けています。専業農家以外からも新しく生産を手掛けるようになるなど、生産者そのものも増えてきました。

船穂の地を訪れると、丘陵から平地にかけて広がる温室風景をあちこちに見ることができる。〜「シャインマスカット」はご存知のように人気の葡萄です。シーズンになると20 度を超える糖度の高さで、皮ごと食べられますしね。ただ私たち生産者には「マスカット(オブ・アレキサンドリア)」が一番という人がやっぱりおりまして。「シャイン(マスカット)」に比べ香りが高く、風味・酸味・甘味のバランスがとれていて品がある。種が気にかかるかもしれませんが、皮ごと食べてみてください。格別です。

葡萄は雨に弱く、温室栽培と言えど季節が変われば湿度・温度管理に注意を払わなければたちまち品質が落ちる。
〜とにかく、私たちは色んな作業を通して丹精を込め、お客さんを裏切らないよう品質一番で葡萄づくりに専念しているんですよ。
そう穏やかに語る浅野さんの言葉に、葡萄づくりにかける確かな誇りを感じることができた。

帰り際、組合のお一人が所有されている温室にご案内いただけることになった。入口をくぐると、300坪のハウス全面に広がる房々に目を奪われた。「ここにできているものはひと月で出荷されます。」という言葉が嬉しく聞こえる。他にもハウスはいくつもあり、時期をずらしながら出荷しているという。「やる以上は、一家を支える栽培事業として続けていきたいです。」という言葉に元気を頂いた。

葡萄の出荷は12月まで続く。

(取材協力)JA岡山西 倉敷西アグリセンター